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半数の子供には本当のワクチンを与えずにプラシーポを与えるため、ワクチンに効果がある以上、与えられない子供には故意に恩恵を与えないことになり、倫理上のジレンマに陥らざるをえなかった。
n財団の手では、その試験は公正にはやれないと感じている研究者もいた。
この財団自体が小児マヒの撲滅に関係しているものなので、どうしても公正になれるわけはないと思えるからだった。
しかし1954年5月中旬までには、3カ所で安全性を確められたワクチンがフィールド試験にかけられ、小学校3年生のなかから64万2360人が、3回打つワクチンのうち1回目の注射を受けた。
ある子は死んだウイルスからつくったワクチン、ある子はプラシーポ、それから何の注射も受けずに注射針を刺しただけという子もあった。
この年、フィールド試験が行なわれた地域では、小児マヒの発生が前年に比べ40パーセント少なくなった。
その後のフィールド試験やワクチンの製造上の問題から、ワクチンが抗体をつくらせる効果にはワクチンのつくられ方で違いが生じ、まったく抗体をつくらせる効果のないワクチンもあることがわかった。
前出の書『W』は、「S・ワクチンとは標準化してつくらねばならないものなのだった」と書いている。
S博士にその仕事を続けさせるべきか否かをめぐって議論が起きているなかで、関係者の1人は「このワクチンの使用を妨げようとする人は、S・ワクチンが使われたら病気にならなかったかもしれない不具の小さな子供たちが、体を返せといって押しかけて来るのを覚悟しなければならない」と語った。
1955年、S・ワクチンはついに市販の薬として売られることとなった。
そのときの『N』は「本当の証拠は記録に残されよう」と書いた。
以来もちろん、記録は雄弁に事実を物語った。
S・ワクチンは悲劇的な病気を退治し、S博士は実験に関係した科学者のなかで誰よりも有名な人物となった。
Hb大医学部のD博士やK博士、ボストンの小児病院では、ガンのほかにも糖尿病性網膜症、リウマチ様関節炎などのなかで起こる血管造成をいかに抑えるかということを明らかにする研究を始めた。
血管造成に関する仮説を最初に発表したF博士も、これに関する研究から多くの病気の治療法が生まれるだろうといっている。
博士の仮説が、多くの研究を促すきっかけになったことは、これですでに紹介したとおりである。
彼は、1987年1月号の『S』誌で糖尿病性網膜症、リウマチ様関節炎、それにガンのときに起こる血管造成が、特別な血管造成抑制物質によって抑えられるか否かという問題を論じている。
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